私たち緑と市民ネットワークの会は、今議会に上程された議案第107号「活力ある福岡空港づくり基金条例案」(以下、基金条例案)についての採決を棄権いたしました。
以下この件について私たちの考えを表明いたします。
国は今、公共施設の民営化を進めています。具体的にはPFI手法による施設の維持・管理を委託する方式から、更に受託者が施設を借り受け施設の利用料金や運営を決定できる運営権譲渡方式のコンセッション導入を進めています。PFI及びコンセッションは、出資を募り特別目的会社を設立して事業を受託します。投資を募る場合には利益率を決めて募り、設定した利益率を確保できることが前提となります。そのため、今回福岡空港運営権譲渡に際して空港の借地料年間80億円が国の負担になったように、不採算部門は国や自治体に負担を求める構造があります。私たちは、公共部門については国及び自治体が公共的責任を果たすべきであり、運営権譲渡(民営化)すべきでないと考えています。
今回、福岡空港を巡る問題は既に運営権譲渡(民営化)を前提とした議論となっており、この様な議案が出されるまでに運営権譲渡(民営化)の是非について議論がなされてこなかったことは大きな問題があると考えています。福岡空港の運営権譲渡に伴う新会社への出資の是非については、福岡県知事・福岡市長の連名で2014年11月26日に「福岡空港の民間委託について 意見」を国土交通省に提出しています。この「意見」は民営化の条件を付しており、新会社への出資を検討するには十分な時間がありました。しかし、市長は2月議会に唐突に福岡空港ビルディング株式会社株の譲渡金処分の補正予算として提案し、このような議会への諮り方が問題を大きくしました。市長が議会に諮らず、議会での議論がなされて来なかったことは大きな問題と考えます。
他方、新会社に出資することについて私たちは疑問をもっています。出資によってどこまで運営に影響を与えられるのか、また出資することについてのメリットとデメリットが不明確であることを懸念しています。これからの社会は、私たちが経験したことのない超高齢社会で、人口減少が進み急激な変化が起こってきます。市民に対して多額の負担をきちんと説明できずに賛成してしまうことはできないとの考えです。また、運営権譲渡(民営化)により航路誘致競争が激化し、空港使用料等の値下げなどにより経営悪化に陥った場合には、市に様々な負担が求められる懸念もあります。
この様な経緯を見て、私たち緑と市民ネットワークの会は、市民にとってどの様な選択がよいのか、議会として未だ十分に議論が出来ているとは考えていません。また、報道では市長と自由民主党福岡市議団との確執が大きく取り上げられています。福岡市民にとって重要な課題を政争の具にしてはなりません。私たちは市民のために議論を深めるべきと考えるとともに問題提起として、いずれの立場も支持をしないという苦渋の判断をいたしました。
私たち緑と市民ネットワークの会は、市民が安心して生活でき、将来の世代が希望を持って生きられる市政実現に向けて努力してまいります。