地下鉄七隈線陥没事故の原因究明を!

11月8日午前5時ごろ、地下鉄七隈線延伸工事で道路陥没事故が起きました。陥没は縦30メートル、横27メートル、深さ15メートルにも及び、ガス、電気、通信、上水道、下水管のインフラも寸断され、またビルの基礎が露出し避難勧告が出されるなど甚大な被害が生じました。多くの事業所・企業の協力を得て7日間で復旧でき、髙島市長のリーダーシップを評価する声もありますが、そもそも事故が起きた原因の究明が必要です。

●安全性よりも経費削減を優先

事故の原因究明は国立研究法人土木研究所に委ねられていますが、もともと工事の技術的検討は福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会でなされており、「ナトム工法に対する懸念」と「ボーリングのデータから地盤に脆い部分があり得る」ことが指摘されていました。ナトム工法で行うことは承認されましたが、トンネルの深さを1メートル下げるとともに「薬剤注入で地盤を補強すべき」と言われていました。しかし12月3日の西日本新聞の報道によると、鉄枠を倍にすることで補強し、薬剤注入による補強がされなかったことが明らかになっています。11月30日の交通対策特別委員会での交通局の答弁からも、ナトム工法の問題と岩盤の補強がされなかったことが原因だと考えられます。

では何故この工法で施行したのか? 延伸工事は工事区間1.4km、事業費450億円。当初から工事費が高いと指摘されており、採算性が問題となっていました。ナトム工法は本来山岳の比較的岩盤が丈夫な場所で採用されるもので、千年前は海であった博多駅周辺では不適と言われています。福岡市の技術専門委員会でもその点は指摘されていましたが、「開削工法よりも安い」ため、“ナトム工法ありき”で進められたのではないかと推察されます。

市長は事故直後の記者会見で「はらわたが煮えくりかえる」と発言していますが、発注の責任者としての自覚がないのは問題です。

(荒木龍昇)

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