コロナ禍の中、不要不急の「自衛隊への名簿提供」はやめるべき!

自衛隊への名簿提供問題について、本日5月15日(金)、高島市長宛および個人情報保護審議会宛に下記の申し入れを行いました。

 

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2020年5月15日

福岡市長 髙島 宗一郎様

緑と市民ネットワークの会
荒木 龍昇
森 あやこ

 自衛官募集のために18歳および22歳の市民の
名簿提供をやめることを求める申し入れ

 市長におかれましては、市民の命と暮らしを守る為に新型コロナウイルス感染症対策に日々尽力されていることに感謝と敬意を表します。4月1日付けで自衛隊と協定書を交わし、自衛官募集のために18歳および22歳の市民の名簿を自衛隊に提供することしていますが、市民の命と暮らしを守る点から中止を求めるものです。

去る1月31日付けで、福岡市は個人情報保護審議会へ自衛官等募集事務に利用することを目的として住民基本台帳記載事項を自衛隊に提供する旨の「個人情報の公益上の取り扱いについて」諮問しました。これを受け個人情報保護審議会目的外利用等審査部会が2月7日に開催され、2月14日に個人情報保護審議会は答申しました。

答申では、「自衛官等募集事務に利用することを目的として、自衛隊に提供することについては、公益上の必要性が認められるものと判断する。」とし、「自衛隊による個人情報の取扱いに不安を感じる市民や自己の個人情報の提供を望まない市民の心情にも配慮する必要があることを十分認識し、以下の措置を講じられるよう要望する。」として以下の措置を求めています。

(1)個人情報を提供する際の媒体は紙のみとし、提供する情報は、適齢者の「氏名」及び「住所」に限ること。

(2)提供する情報の取扱いについては、目的外利用の禁止等の情報管理の徹底及び事務終了後の確実な廃棄並びにこれらの実施状況に関する報告を書面で求めるなど、個人情報保護の観点から厳格な措置を講じること。

(3)毎年度、情報の提供に先立って、公益上の必要性に関する説明を含めた市民への周知を行い、自己の情報を提供してほしくない旨の意思表示を行った市民については、提供する情報から除外する措置を講じること。

(4)毎年度、自衛隊に個人情報を提供したことについて、公表を行うこと。

福岡市は答申を受け、自衛隊に18歳、22歳の市民の「氏名」「住所」の2情報を紙媒体で提供することを決め、4月1日から6月1日まで名簿の提供を望まない市民の申し出を受けるとして広報しました。福岡市議会では周知を図るためにダイレクトメールを該当市民に郵送することを求める意見も出ましたが、福岡市は拒否しています。市が周知の手段として実施した措置は、市政だより1回、福岡市ホームページ掲載および福岡市公式ツイッターで告知、各高校・大学にポスター1枚の掲示とチラシを若干枚配布、というものです。

福岡市が執っている措置は、答申が求めた措置(3)に反しています。福岡市の措置は個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、福岡市個人情報保護条例で謳われている原則個人情報の目的外利用を厳しく禁じている趣旨を踏まえていません。市の執るべき措置は、個人情報保護法のガイドラインが示す「「本人に通知」とは、本人に直接知らしめることをいい、事実の性質および個人情報の取り扱い状況に応じて、内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法によらなければならない。」に準ずるべきです。

また、2月18日総務財政委員会の説明では、市当局は繰り返し個人情報保護条例第10条第2項6号の公益上の理由なので、条例第10条第2項2号「本人の同意があるとき」は条例第10条第2項の提供できる事例として併記されているので、法の立て付けから本人の同意を取らなくなくても良いと答えています。しかし、個人情報保護法第8条および福岡市個人情報保護条例第10条第2項では「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められる場合は」公益上等の必要があっても個人情報の提供を禁じており、福岡市は該当する市民に自衛隊に個人情報を提供するにあたり権利利益を侵害するおそれがないことを説明する責任があります。その為には本人が直接知りうる状況ないしは同等の周知の徹底が必要ですが、そのようになされているとはいえません。

2月7日の個人情報審議会目的外使用等部会の審議において、最後のところで部会長が「提供を望まない方について、きちんとした措置を講じることも求めるということだが、よろしいか。」と発言すると委員の一人から「条件として加えるということか」と確認する質問が出され、部会長は「そうである」と回答しています。この部会でのやりとりを見ると、答申が求める措置は単なる要望ではなく、名簿提供の条件と解されます。市は誠実に履行する責務があります。

2016年7月に南スーダン・ジュバに派遣された陸上自衛隊は南スーダン政府軍と反政府軍との戦闘に巻き込まれる寸前でした。ジュバに派遣された自衛官は家族に遺書を書いて日本を発ちました。2001年から2010年までイラク・アフガン戦争の時に米軍支援で派遣された自衛官のうち、帰国後に自殺した自衛官は56人にのぼっています。先日5月10日佐世保港から護衛艦「きりさめ」が2月に派遣された護衛官「たかなみ」の交替のため、緊張が高まる中東に派遣されました。2014年4月日米新ガイドラインに改訂され、2015年9月に戦争法が強行採決されたことで、米軍の作戦支援のために海外の紛争地へ派遣されるようになり、自衛隊は災害救助だけではなく戦闘行為による生命の危険を伴う現状があります。この様な自衛隊に名簿提供することの意味を考えたとき、名簿提供は市民を戦場に送ることに繋がることは明らかです。これは地方自治の本旨である「住民の福祉の増進を図る」ことに反する行為です。福岡市は自衛隊の現状を説明し、該当市民の権利利益の侵害にならないことを説明すべきですが、出来ているとは考えられません。

また、全国の他都市の状況を見ても名簿提供が少なく、提供しない理由に自衛官募集のために該当市民の名簿提供をする法的根拠が明確ではないことを挙げています。業務従事者募集である自衛官募集のために名簿提供することの公益性よりも個人情報保護の公益性が大きいと判断しているからです。まして事務的業務負担軽減の公益性が個人情報保護の公益性よりも重いとはとんでもない発想です。

そもそも、業務従事者募集のために名簿を提供することは「福岡市個人情報保護条例第10条第2項第6号の「公益上の必要性」に該当するとは考えられません。「個人情報の公益上の取扱いに関する基準」における「類型3  保有個人情報の目的外での利用又は提供(条例第10条第2項第6号)」の「b 実施機関以外の者への提供」の規定をみると、個人情報の提供が業務従事者募集に必要不可欠ではないうえ該当しません。福岡市の人権感覚が問われています。

さらに、新型コロナウイルス感染症による大学および小中高校の休校が3月2日より実施されており、4月7日には緊急事態宣言が発出され、福岡県は特定警戒都道府県に指定されています。緊急事態宣言が5月15日午前零時に解除されましたが、解除後直ちに従前の状況に戻るとは考えられません。大学や高校に配布されたポスターはたった1枚であるうえ事実上周知に全く役立っていません。このような状況で自衛隊に該当市民の名簿を提供することは、答申の趣旨に反すると共に法に反し人権侵害に当たると考えます。新型コロナウイルス感染症対策に集中すべき時に不要不急の業務はやめるべきです。

以上のことから、市長は自衛官募集のために18歳および22歳の市民の名簿を自衛隊に提供することをやめることを求めます。

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2020年5月15日

福岡市個人情報保護審議会 会長 村上 裕章様
福岡市個人情報保護審議会 委員各位

緑と市民ネットワークの会
荒木 龍昇
森 あやこ

福岡市が自衛隊への該当市民の名簿を提供することを
中止するよう意見を出してください

 貴個人情報保護審議会におかれましては、福岡市民の権利擁護にご尽力なされていますことに感謝いたします。

去る1月31日付けで、福岡市は貴審議会へ自衛官等募集事務に利用することを目的として住民基本台帳記載事項を自衛隊に提供する旨の「個人情報の公益上の取り扱いについて」諮問しました。これを受け個人情報保護審議会目的外利用等審査部会が2月7日に開催され、2月14日に貴審議会は答申されました。

答申では、「自衛官等募集事務に利用することを目的として、自衛隊に提供することについては,公益上の必要性が認められるものと判断する。」とし、「自衛隊による個人情報の取扱いに不安を感じる市民や自己の個人情報の提供を望まない市民の心情にも配慮する必要があることを十分認識し、以下の措置を講じられるよう要望する。」として以下の措置を求めています。

(1)個人情報を提供する際の媒体は紙のみとし、提供する情報は、適齢者の「氏名」及び「住所」に限ること。

(2)提供する情報の取扱いについては、目的外利用の禁止等の情報管理の徹底及び事務終了後の確実な廃棄並びにこれらの実施状況に関する報告を書面で求めるなど、個人情報保護の観点から厳格な措置を講じること。

(3)毎年度、情報の提供に先立って、公益上の必要性に関する説明を含めた市民への周知を行い、自己の情報を提供してほしくない旨の意思表示を行った市民については、提供する情報から除外する措置を講じること。

(4)毎年度、自衛隊に個人情報を提供したことについて、公表を行うこと。

福岡市は答申を受け、自衛隊に18歳、22歳の市民の「氏名」「住所」の2情報を紙媒体で提供することを決め、4月1日から6月1日まで名簿の提供を望まない市民の申し出を受けるとして広報しました。福岡市議会では周知を図るためにダイレクトメールを該当市民に郵送することを求めましたが、福岡市は拒否しています。市が周知の手段として実施した措置は、市政だより1回、福岡市ホームページ掲載および福岡市公式ツイッターで告知、各高校・大学にポスター1枚の掲示とチラシを若干枚配布、というものです。

福岡市が執っている措置は、答申が求めた措置(3)に反しているのではないかと考えます。福岡市の措置が個人情報保護法、行政機関個人情報保護法、福岡市個人情報保護条例で謳われている原則個人情報の目的外利用を厳しく禁じている趣旨を踏まえているとは考えられません。原則目的外利用禁止の趣旨から、「実施機関以外の者」に情報提供するに当たっては、個人情報保護法のガイドラインが示す「「本人へ通知」とは、本人に直接知らしめることをいい、事実の性質および個人情報の取り扱い状況に応じて、内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法によらなければならない。」に準ずるべきです。また、個人情報保護法第8条および福岡市個人情報保護条例第10条では「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められる場合は」個人情報の提供を禁じており、福岡市は該当する市民に自衛隊に個人情報を提供するにあたり権利利益を侵害するおそれがないことを説明する責任があり、周知の徹底が必要ですがなされているとはいえません。

さらに、新型コロナウイルス感染症による大学および小中高校の休校が3月2日より実施されており、4月7日には緊急事態宣言が発出され、福岡県は特定警戒都道府県に指定されています。緊急事態宣言が5月半ばに解除される見込みですが、解除後直ちに従前の状況に戻るとは考えられません。大学や高校に配布されたポスターはたった1枚であるうえ事実上周知に全く役立っていません。このような状況で自衛隊に該当市民の名簿を提供することは、答申の趣旨に反すると共に法に反し人権侵害に当たると考えます。

そもそも、業務従事者募集のために名簿を提供することは「福岡市個人情報保護条例第10条第2項第6号の「公益上の必要性」に該当するとは考えられません。「個人情報の公益上の取扱いに関する基準」における「類型3 保有個人情報の目的外での利用又は提供(条例第10条第2項第6号)」の「b 実施機関以外の者への提供」の規定をみると、個人情報の提供が業務従事者募集に必要不可欠でないうえ該当しないと考えるからです。

緑と市民ネットワークの会は、貴審議会において福岡市の措置が答申に誠実に応えているのか、特に答申が求めた周知がしっかりとなされているのかを検討され、もし市の措置が不十分だと判断するのであれば、自衛隊への該当市民の名簿を提供することを中止するよう意見を出していただくことを要請いたします。

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